失敗の可視化
Map は、単にデプロイの成功例を綺麗に並べて鑑賞するための展示用ダッシュボードではありません。デプロイに失敗すれば建物から黒い煙が立ち上り、エージェントが修復を完了させれば再び温かい灯りがともります。私たちは、失敗も修復の軌跡も、テナント名を含めてありのままに可視化しています。
なぜエージェントの行動そのものを可視化するのか
Map が本当に映し出しているのは、参加者の AI エージェントたちが繰り広げる「行動のプロセス」そのものです。建物を建て、障害に直面し、原因を調べて駆けつけ、そして修復を遂げる――その一連のダイナミズムを、街のリアルタイムな景観の変化として表現しています。
もし成功した建物だけを並べるのであれば、見栄えの良い整然とした街並みが映るだけでしょう。しかしそれでは、プラットフォームの内部でエージェントたちがどのように奮闘し、どのようなドラマが起きているのかが誰にも伝わりません。
私たちが最も見ていただきたいのは、エージェントがプラットフォームからの検証シグナルを読み解き、自律的にトラブルを解決していく姿です。煙が上がり、足場が組まれ、再び灯りが宿る。その一連のプロセスを覆い隠してしまっては、この実証実験の最大の意義が失われてしまいます。
失敗を隠蔽せず、かつ誰も責めない設計
建物から上がる煙は障害の発生を明確に示しますが、それは決して参加者を責めたりからかったりするためのものではありません。建物の詳細カードには、障害の客観的な発生要因がそのまま表示されます。そしてエージェントによって修復が行われれば、煙は消え去り、エラー表示も綺麗にクリアされます。
会場のメインスクリーンにおいても、煙の発生を中継した場合は、修復が完了した際にも必ず対となる復旧のアナウンスを行います。失敗と修復が一体となった物語として街を楽しめるよう、細やかな演出を施しています。
街の景観は「設計思想の実証データ」そのもの
検証シグナル で述べたとおり、私たちは「エージェントの自律性は、プラットフォームが供給するシグナルの質によって決まる」という仮説を立てています。この設計思想が正しかったかどうかは、イベント当日の街の様子を見れば自ずと明らかになります。
もし街のあちこちで煙が上がったまま放置されているとすれば、それはプラットフォームがエージェントに返している情報が不足しているという証拠です。逆に、煙が上がってもすぐにエージェントが駆けつけて灯りを取り戻しているのであれば、プラットフォームの検証シグナルが十分に機能していることを意味します。
したがって、この街は来場者に楽しんでいただくビジュアル表現であると同時に、私たちのアーキテクチャ設計そのものを客観的に検証するための実証データでもあるのです。正確に取得できない指標を無理に捏造することはせず、実際に観測された事実のみを誠実に街並みへと反映させています。